石木ダム問題への個人的見解ーもう中止するべき時だ

 石木ダム問題ブックレットを読み、家にあった長崎地方の20万分の一の地形図を見た(図ー1)。佐世保市や大村湾など目について、その隣の方に細長く川沿いに続く平坦地が白く塗られていた。そこが川棚川(かわたながわ)でありその支流に沿って石木や川原、岩屋などの地名が目に入った。川棚川というのは2級河川であり、そこに流れ込む石木川にダムを計画していることが石木ダム問題だ(図1及び図2参照)。
 
 図-2はWEBで公開されている国土地理院の川棚川周辺の地形図だ。赤線は川棚川の集水域で、川棚川はその中央部よりやや左側(西側)を南北方向に流れている。長さは19.4kmで流域面積81.4平方㎞、水源の標高340mという(ウィキペディアより)。
 石木川ダムはこの川棚川支流である石木川に建設予定のダムで、図ー2の緑色の部分が雨の集水域で、ダム本体はピンク色の棒線部分あたりだ。図ー3にその部分を拡大している。

 これを見てわかるように、ダムの予定地は山岳地ではなく石木川沿いの畑や水田が残る部分で、2つの川が合流する地点より下流のやや開けた低地だ。ウィキペディアの記載によれば、ダムの大きさは高さ54.5m、堰堤の長さ234mの重力式コンクリートダムで、ダム建設により、水田約3,200a・畑1,600a・山林1,200a・宅地48,600m²(住家64戸・非住宅20棟)・墓地1,000m²が水没するとしている(1a=100平方m)。

 このダムの建設が持ち上がったのはブックレットによれば1962年で、測量調査などすぐに地元民の反対で中止になったが、その後1971年再度、長崎県から予備調査の依頼があり、地元と県が「地元の了解なしにはダムは作らない」という覚書を交わして予備調査に同意したという。ダム建設の目的は洪水対策と佐世保市の利水事業にある。実際、図ー2の青色部分に示したように1990年(平成2)には川棚町の中心部から河口付近で広範囲に床下・あるいは床上浸水が発生したようだ。また、これ以前にも1948年、1956年、1967年に川棚川の氾濫で大きな水害被害を被ったという記録がある(ブックレットより)。

また、利水事業に関しては佐世保市がダムの利水事業者であるため、ある程度の建設費を負担すると共に、水不足の現状や今後の水需要の増加などダムの必要性を訴えている。

 現在のダムの進捗状況は移転家屋80戸のうち13戸が移転を拒んでおり(石木ダム建設事務所ホームページ)、総事業費285億円のうち、すでに139億円(49%)を24年度までに支出、用地買収は80%程度らしい。長崎県など事業者は移転拒否13戸に対して訴訟しており、強制執行で立ち退かせるつもりらしい。それに対して住民らは頑なに移転を拒んでいるのが現状のようだ。


図ー1 市販されている20万分の一地形図、長崎及び熊本より
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図-2 WEB上の地形図、赤線が本棚川の集水域、緑が建設予定の岩木ダム集水域、青色が洪水域
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図-3 岩木ダム予定地の拡大図(緑色が雨の集水域、青色がダムの水域でここまで水面が色広がる)
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地理院地図(ネットにつながる。地域を拡大できるので詳しく地形を見れる)
http://maps.gsi.go.jp/#12/33.103046/129.849472/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0l0u0t0z0r0f0

個人的な見解
 
 これまで大阪で少し地質調査の仕事に携わった経験からいうと、洪水についてはダム以外に方法はないというのは、おかしいと思う。日本のどこでも洪水については悩まされている。山がちな地域においては河川はそれらを縫うように流れて、その周りや河口に沖積低地を形成している。それは日本のどの地域においても共通なことのだ。大阪でも淀川という1級河川があるが、大阪という低地を形成したのはその氾濫による堆積物だ。それは大阪市内では深さ20~30mに及ぶ。それだけ河川は氾濫するのだ。しかしその氾濫をダムでは止めていない。新淀川という新しい流路を作り、堤防をかさ上げし、昔の中津川を埋めて、河川改修したのだ。江戸時代には淀川と合流していた大和川をまっすぐにして流路を変えた。

 川棚川の場合、石木川の合流あたりから氾濫しているが(図-2)、合流点というのは氾濫しやすい地形だ。そこを変える必要はあるだろう。ダムを作って、水が入らないようにすれば、洪水が起きにくくなるかもしれない。しかし、石木川ダムの集水面積は地理院地図で計算すると、9.5平方㎞(図ー2の緑の部分)。全体の12%ぐらいだ。もし氾濫が起きた降水量の12%多く降ると、ダムがあっても再び氾濫する可能性が高い。川棚川の本流にはダムがない。石木川にダムを作っても、他の支流からの流入により、氾濫が起きないとも限らない。

 また、河口には埋め立て地があり、河口における河川の水はけが悪くなっている可能性もある。大村湾というのは海水の流れが悪そうであり、通常、潮の流れで河川水も運ばれると考えられる。河川の水はけが悪いと、河川の水位が高くなり、洪水を引き起こす原因にもなる。

 大阪では護岸工事がよく行われており、私の住むすぐ近くの木津川では道路より高さ2m位のコンクリート護岸が続いている。道路から川は見えない。川棚川は中州も多く、河川の深さが浅いようだ。浚渫し、護岸をかさ上げすれば、洪水を防げるようにも思える。ダムありき、ではないはずだ。

 それより、渇水対策の方が喫緊な課題であるように思える。佐世保市は住民らに対して将来への水不足を資料で提出しているが(ブックレットより)、これが過大な見積もりであり、現実にはほとんど増えていないにもかかわらず、大幅な増大を見込んでいる。また、石木ダムができてそこから取水することにより、これまでの河川からの不安定なものから安定的な取水に代わり、渇水などがなくなると説明している。

 実際、長崎県内は大きな1級河川が見当たらなく、ほとんどが2級河川どまりのように見える。山も低く、山岳地帯にみられる大きなダムは望めそうもないかもしれない。そうした中で、石木ダム建設地は背後に虚空蔵山という600mの山があり、適地でもある。しかし、渇水対策としてダムを考えると、ほかに手立てがありそうにも思う。もっと小さいなダムを造ればとか、佐賀県から導水管を引き、佐世保市へ供給すればとか、佐賀県から水を買えば、とか。50年以上にわたりケンカを続けるのは、住民の生活権を地方自治体が侵害しているとも受け取れるわけで、もう時効にするべき懸案だと考えられる。

 そうするなら、いまだ訴訟でもって住民に立ち退きを迫るということは、非常識極まりないと言えなくもない。もうダム建設は中止にするべき時だろう。また、住民に対してこれだけ長期間苦しめたのだから損害賠償の責任も負うべきだろう。

長崎県石木ダム建設事務所ホームページ
https://www.pref.nagasaki.jp/section/ishikidam/


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