村上春樹著「独立器官」(短編集”女のいない男たち”より)を読んで

 この短編集は6編からなっていて、私は丁度3編目を読んだところだ。その3編目が「独立器官」だ。3編目までを読んで感じるのは、この著者は人間の深層心理をとても丁寧に表現していると言うことだ。ことに若くて、やや上流家庭の男女の心理描写は得意とするところなのだろう。

「独立器官」は、女の遊び相手に不足しない独身整形外科医が、不倫だと思っていた相手を本当に好きになり、恋焦がれるようになる。そんな頃、アウシュヴィツの本を読み「私とはいったい何ものなのだろう」って考えるようになる。「私から美容整形外科医としての能力やキャリアを取り去ってしまったら、・・・裸の一個の人間として放り出されたら、この私はいったい何者になるのだろう」と。

そして、その恋焦がれた女性が、外科医を不倫相手としてではなくて、第3者との不倫を隠すために利用していたことをしり、その落差の大きさに死ぬことを覚悟する。外科医の秘書が、その不倫相手の女性に、先生が恋焦がれて死にそうだから,一目あってほしいと女性に懇願する。しかし、女性はあわない。

女性には、うそをつくための独立器官が備わっていると言うのが、元気な時の外科医の個人的見解だった。外科医は恋焦がれ、飢餓に苦しみつつ、その見解を確認しつつ自分の意思として死んでいく。

女性が顔色を変えずうそをつける独立器官を持っているというのは、私も多分、そうだと思う。しかし、うそをつくということは、それだけ自分が弱いことの証明だし、男でも自分の過去のことは事実をそのまま言えない。ま、男女ともそれぞれに違った方面でこだわりがあるのだろう。

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