今回の任命拒否のいきさつの一端を菅(「すが」と呼ぶ。「かん」ではない)首相が11月5日の参議院予算委員会で、自民党の二之湯智氏の質問に答える形で明らかにしている。氏は概要こう質問した。
「学術会議が正式に105名の推薦者名簿を提出する前に、内閣府の事務局と官邸で事前調整が行われていて、大西前会長もそうしたことをしたと話されています。史上初めて任命拒否を行ったとも報道されていますが、こうした事前調整の経緯が事実であるならば、任命の考え方や手順が従来と中身が変わらないのではないか。この際、言える範囲内で、説明していただきたい」
それに対して菅(すが)首相は
「以前は、学術会議が正式の推薦名簿を提出される前に、様々な意見交換の中で内閣府事務局と学術会議の会長との間で一定の調整が行われていたと承知しています。一方、今回の任命にあたってはそうした推薦前の調整が働かず、結果として会議から推薦されたものの中に、任命に至らなかった者が生じた。
日本学術会議法の規定に基づき、任命権者が学術会議に求められる役割を踏まえ、適切に判断するという考え方は、以前のように事前に一定の調整が行われた場合と、今回のように、推薦名簿を頂いたのち、99名を任命を行う場合と、変わらないと思います。」(参議院予算委員会のネット中継より当方が文章化)
この答弁からも明らかなように、任命権者として学術会議の会員の選考に干渉したいのだろう。それは明らかに学術会議への干渉であり、学術会議への独立性・自立性への侵害であり、学問の自由への権力者の干渉である。学問への干渉・口出しは現に戒めるべきことであり、憲法が第二十三条に掲げる「学問の自由は、これを保障する。」に抵触する可能性がある。もともと、日本学術会議の設立目的は、日本が戦前、学術関係者らが戦争への協力を行ったことや戦争を止めることもできず、推進したことへの反省からだと聞く。そのため、設立当初から独立性がうたわれて、中曽根首相も国会で任命は形だけだと答弁してきたらしい。
なぜ、会議への口出しは学問の自由への干渉になるのか。それは直接的には個々の思想や学問への口出しではない。しかし、学術会議という日本の学問世界の頂点の会議への人選を通じて、こういう思想の人は国は認めませんよ、こういう人で構成してほしいと言っているのと同じだ。すなわち、除外された人は国から排除命令を受けているよなものであり、こうした考え・思想は国として認めませんよ、と言っているようなものだ。それは間接的な学問世界への干渉であり、分断・排除思想だ。設立当初の目的からしても、国が会員人事に口を出してはいけない。
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