伊吹山の数奇な運命(そのながーい歴史から)

 4月11日に伊吹山に登ってきたが、その時感じたことについて記したい。帰途につく際、JR近江長岡駅のプラットホームから見た伊吹山は、明らかにいびつな形をしており、通常の山とは違って、頂上付近からはぎ落されたような印象を受けた。これは明らかに滑っているのだなという感想を持った。

 登っている時は、真正面に山容を仰ぎ見るような形になるので、それほどいびつさは感じない。しかし、岩石を見ると、ほとんどが転石からなっており、岩盤が露出していると明確に言えるものはなかった。石灰岩の岩石は細粒の黒っぽい土壌に覆われており、岩石と土壌との関係が異質な感じがした。土壌が石灰岩が風化したものに思えない。
 
 石灰岩はやや大きめの転石として地表面に露出しており、その表面や隙間を土壌が埋める。またそれらには非常に節理や亀裂が発達しており、数10㎝大から握りこぶし、砕石状までいろいろな形に割れやすい。何mもあるような明確な露岩はなく、岩盤は露出していないといえる。もしかして石灰岩が、その地表面下で一続きであったとしても、その間隙にかなりの土壌が入り込んでいるとみられ、それは亀裂沿いに滑ったり崩壊した痕跡とも受け取れる。

 滑っているかどうかを確認してみようと、伊吹山の歩いたおおよそのルートに沿って断面図を描いた(下図)。エクセルのグラフ機能を使って、大まかに描き、それへ、勝手に滑り線を描いた。正しさへの根拠はない。崩壊について、歴史的な文章は残っていないようなので、有史以前であってもおかしくない。

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 少し古い本になるが、平朝彦著「日本列島の誕生」(岩波新書、1990年発行)に、この伊吹山の石灰岩ができた由来がのっているのを見かけた。それによると、小澤智生氏の発案ということだが、古生代のころ(2億4千年前以前)、赤道域にあったサンゴ礁をいだいた海山がプレートにのり移動してきた。海山は太平洋の真ん中あたりの海嶺でマグマの噴火により玄武岩溶岩のかたまりできるが、その移動中、海山の周囲にはサンゴ礁ができる。伊吹山の石灰岩は不純物を含まず、陸から遠いところでできたということことがわかっている。海山はその重みにより徐々に沈み込んで海底数千メートルを移動する。その時堆積するのは、細粒の半遠洋性泥岩やプランクトンの死がいなど。プランクトンの死がいはチャートになる。泥岩は放散虫化石や火山灰などを含み、赤色頁岩などができる。そして1億5千年前頃のジュラ紀に、これらの海山列が海溝に沈み込み、陸側に付加したという。従って、これらの地層からはジュラ紀以降の新しい堆積物はない。ジュラ紀以前のプレートの移動中の堆積物からなる。

 付加する際、海山すべてがが付加しなかった。海山部分の、重い岩石からできている部分(玄武岩など)は、プレートと共に深部へもぐりこんた。そして海山の上側にあった玄武岩やサンゴ部分、すなわち石灰岩の部分やチャートなどが共に陸側に付加したというのだ。

 したがって、地質的には玄武岩や石灰岩、チャート、陸側の堆積物(タービダイト)、赤色頁岩などが、この地域の地質を構成していることになる。また、年代的には玄武岩が最も古くて3億年前、その次が移動途中にできた石灰岩やチャート、頁岩、そして最も新しいのが、陸側堆積物となる。沈み込んだのが、1億5千年前なのだ。だから、伊吹山というのは、海洋底で産声を上げ、その後海底を移動し、大陸に付加し、持ち上げってできた山なのだ。山というより、海山の頭の部分のちょん切れたところなのだ。

 実際に登った印象からは、玄武岩が全くと言っていいほど見られなかった。地質図では、伊吹山のふもとから中腹にかけて広範囲に玄武岩が広がっているのだが。ほとんどすべて石灰岩だった。それも転石としての。時たま、赤色頁岩(一部チャートかも)がみられた。下図。

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 年代については、石灰石に含まれるフズリナや泥岩・チャートに含まれる、コノドント、放散虫化石などを手掛かりに調べられているようです。また火成岩では放射性年代も有効のようです。

 石灰岩の中で、目を引くかたまりがあった。砕石状の大きさの石灰岩が集まって、一つの岩盤をつくっているように見えるのだ。日本の国歌の中で、”さざれ 石の いわを となりて 苔のむすまで”という、歌があるが、ネットで検索してみたら、さざれ石、というのは、石灰岩が礫状にかたまったもの、という説明をしている文章が目についた。本当かウソか知らないが、さざれ石と思われる礫状の石灰岩はあちこちで目についた。その礫の大きさも、いろいろであり、海山当時の破砕されたものかもしれないし、付加した時に断層や亀裂によりばらばらになりその後引っ付いたのかもしれない。下の写真。

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