市川崑監督映画「細雪」(1983)を見て

 大阪難波で市川崑監督の映画「細雪」(1983、午前十時の映画祭)を見た。この映画は、昭和13年頃の大阪や京都、芦屋を舞台に、船場の没落していく上流家庭の残された4人姉妹の、”きょうだい愛”(正しくは姉妹愛)を描いている。残されたというのは、親が死に、婿養子を取った年長の娘が本家を、次女がまた、婿養子を貰って、分家を継いでいる。大きな家を大阪・上本町と芦屋に持っており、家督もあるという具合だ。でも、業績不振から徐々に陰りが出始めており、生活そのものに、暗い影を落としている。
 この映画の見どころは、多分女性という人間の、優雅さや言葉の奥行の深さ、依存する人間の微妙な関係性についてではないだろうか。男同士の会話というのは、あっさりして明瞭、簡潔だが、女性がそこにいると、言葉がそんなに直接的にはならないで、変に紆余曲折する。そこに、無機質な関係から、有機質な人間としてのドロドロした関係性が生まれる感じがする。それが、男にも女にも、人生を深く掘り下げた、地に足付いた人生を作り上げるのではないだろうか。
 そのことを表現したのが、女優の個性だ。岸恵子は一番年長の姉を演じているが、本家を相続して婿養子をもらっているが、没落していく中でも、婿養子を愛し、信じ、東京転勤についていく。顔がとても綺麗で、可愛い。二番目の姉は、佐久間良子が演じているが、芦屋の分家を継いでおり、落ち着いた家庭婦人で、姉妹思いだ。その夫が、石坂浩二だ。この人の役は、ちょっと変わっていいて、頼りなくて、それでいてほかの女性に手を出す。一番下の娘は古手川祐子が演じていて、姉たちとは違って、自由奔放な生き方をしている。でも、その自由奔放さは家制度や姉らへのへの反発かも知れない。そのために、いろいろな男性と関係を持つが、長く続かない。でも、最終的にはバーテンダーと仲良くなり、質素なアパートで暮らし始める。このことを姉妹らが、愛情で支えていく。

 そして3女を演じるのが吉永小百合だ。この映画の中では、最もしとやかな女性を演じているが、あまり似合っていない感じがする。次から次にお見合いをして断るが、最後に貴族の男性と結婚するようになり、年長の姉達からじっくり選んでよかったね、と褒められる。それぞれ4人の姉妹の生き様だ。

 個人的には私の嫁も、3人姉妹だった。女という生き物は不思議なものだ。そこにいるだけで、人生が深まる感じがする。それでいて、とても打算的だ。それでいて岸惠子が演じる姉のように、従順で、可愛い。男同士の兄弟愛は、どうなんでしょう。私にも兄がいたが 早く死んだので、大人になってからの兄弟愛は知りません。でも、子供の頃、兄のことは好きで好きでしようがなかった。今生きていたら、どんな感覚で兄を見つめているのだろう。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック